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当ブログは"ひとつのゲームを語り尽くす"をコンセプトに管理人SHOと謎の少女ミコが語るサイトです。時々小説。
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プレイしながら小説を書く企画の第一弾、アクションアドベンチャーゲームの名作である『ゼルダの伝説』の第3話です。

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「まいど、おおきに」
 リンクは店主に60ルピーを手渡し、キャンドルを購入した。これは明かりを灯すだけではなく、炎を放出することもできる優れものらしい。
(炎を吐くキャンドルなんて大丈夫かな)
 付加価値に不安を覚えたリンクだが、返品不可と言われていたので気にしないことに決めた。

 山間部に迷い込んだリンクはある洞窟を発見する。中には老人がひとり地べたに座り、その前に真っ白な剣が突き立てられていた。
「使いこなせるなら、これを授けよう」
 老人の問いに頷いたリンクはさっそく全身のストレッチを始める。これまでルピーの採掘現場などを手伝った経験があり、力仕事には自信があった。リンクは両手でしっかりと剣の柄を握ると呼吸を整えてから一気に力をこめる。
「はぁっ!」
 顔を真っ赤にするリンクを嘲笑うかのように剣はピクリとも動かない。その後も何度か挑戦を試みたが結局引き抜くことはできなかった。老人の視線に気付いたリンクは肩身の狭い思いで洞窟を後にした。

 次の迷宮を求めてさまようリンクだったが、手がかりもないまま不毛な戦いが続いていた。時折、店に立ち寄ることもあったが、高価なものが多く回れ右を繰り返した。
 リンクが森の中でキャンドルの効果を確かめていたときのこと。過度のストレスがリンクを突き動かし、冗談半分で木に向けて炎を放ちだす。
「汚物は消毒だぁ!」
 リンクの表情は活き活きとしていた。当然ながらキャンドルの炎程度で立ち木が燃えることはない。しかし目の前の木だけはリンクの期待を裏切るように勢いよく燃えはじめた。
「え……」
 リンクの顔からみるみる血の気が引いていった。まずは水が必要だという判断に思い至る。急いで湖のほとりまで走るとさらに重大な問題に直面した。水を運ぶための入れ物がない。リンクは意を決すると上着を脱ぎ、湖に浸した。乱れる息をそのままに戻ってくると、火はすでに消えていた。
(どうして?)
 燃えていた木があった場所へ駆け寄ると、そこには地下への隠し階段が出現していた。
 リンクは上着を絞り上げながら同時に興奮を覚えていた。これだけ隠ぺいされた地下室にいったいなにがあるのだろう。ものすごいお宝が隠されているのかもしれない。そう考えただけでリンクの鼓動は自然と速まった。
 階段を下りるとこじんまりとした空間があり、温和な表情のおじさんがいた。リンクは緊張の面持ちでおじさんに歩み寄る。
「みんなに内緒だよ」
 おじさんはそう言ってリンクに小袋を渡す。リンクはさっそく袋の中身をあらためると出てきたのは10ルピーだけ。
(ん? これだけ?)
 リンクは二度三度袋を振ってみたが他には何も出てこなかった。
「あの、これは?」
 たまらずおじさんに確認を取るリンク。するとおじさんは満面の笑みで頷く。
「この地下室があることは秘密にしていてね。それはほんの気持ちだから取っておきなさい」
「はぁ」
 期待値とのギャップにリンクは肩を落とした。おじさんはそんなリンクにぼそりとつぶやく。
「申し訳ないがわたしもそれで精一杯なんだ。君も受け取った以上は約束を守ってくれよ」
 リンクはこの出会いを通して大人の生き方を垣間見た気がした。



 森の匂いが染み付いたリンクはようやく次の迷宮へとたどり着いた。壁面に"LEVEL-2"と刻まれた細い入り口に続いて青一色の空間が広がる。
(前の場所よりも少し暗く感じるな)
 襲いくる蛇やゲルも難なく倒し、道中はとても順調。だが、その部屋だけは一味違っていた。四隅の砲台に加えて青い小鬼が複数体がたむろしている。砲台のビームと小鬼のブーメランがリンクの行動を妨げていく。
「うあっ」
 四方からのビームは盾で防げないこともあり、リンクの体力を徐々に奪う。それでも間隙を縫って小鬼を一体ずつ仕留めていき、なんとか敵のせん滅に成功した。
(魔物は確実に強くなっている。もっといい装備が必要かもしれないな)
 リンクはマジカルブーメランを拾うと深く溜息をついた。

 この土地の迷宮には助言をくれる老人がつきものらしい。その部屋に入った瞬間、リンクは渋い顔をした。簡素な衣服に身を包んだ老人の両脇には炎が揺らめいている。
「ドドンゴは煙を嫌う」
「ドドンゴ?」
「この奥にいる大きなサイのことじゃ。宝を守る魔物じゃよ」
 前回と同じくトライフォースを守護する魔物がいることを知ったリンクは表情を引き締める。長居は無用とリンクは老人にお礼を言うと早めにその場を立ち去った。
(ここの人はまともでよかった)
 そんな些細なことがリンクの心を少し豊かにさせた。

 雄たけびが耳に伝わる。それはリンクがドドンゴの近くにいることを訴えていた。
「煙が弱点ってどういう意味かな」
「わかんない。でも、あのおじいさんはいい人間だから嘘はつかないわ。ちょっとスケベだけど」
 リンクはさっき助けたばかりのフィーネに老人の言葉を尋ねてみた。分かったことはあの老人がスケベであるという新事実だけ。
「やるだけやってみるか」
 フィーネの笑顔を見るだけでリンクも自然と笑顔になった。一人旅のリンクにとってフィーネの存在はとても大きく、他の妖精にはない特別な感情を抱きつつあった。

 ドドンゴは巨体を揺すりながら部屋中をかっ歩していた。闘争本能を感じさせない振る舞いが不敵さを感じさせる。リンクはその緩慢な動きを見るや、後ろに回りこむと思い切り剣を振り下ろした。
 キィーーン!
 硬質の皮膚がリンクの剣を弾き飛ばす。背中の他に顔、足や尻尾を攻撃してみるが、結果は変わらない。フィーネはたまらず口を出す。
「やっぱり煙よっ!」
「信じてみるか」
 リンクは爆弾を取り出して火をつけるとドドンゴの進行方向に置き素早く離れる。ドドンゴは爆弾に近寄るとおもむろに飲み込んだ。
「あ、食べられちゃった」
 ドドンゴは一瞬苦しげな表情を見せたが、すぐにまた歩き出した。効果てきめんと呼ぶには程遠い結果だ。
「爆弾じゃないとしたら、何?」
「う~ん、キャンドルはどうかなぁ」
 他に煙を出せる可能性があるのはキャンドルしかなかった。リンクはドドンゴの正面に立つと手探りでキャンドルを取り出そうとする。だが、紐が引っかかってなかなか取り出せない。
「あ、あれ?」
 後ずさりしながらようやくキャンドルを引き抜く。
「リンク、爆弾に火が!」
「え?」
 キャンドルを取り出す際、無理やりに引っ張りだしたせいで炎が爆弾の導火線をなめていた。
「うわぁっ」
 どの爆弾が着火しているかを確認する時間はなく、持っているすべての爆弾を投げ捨てた。ひとつが爆発すると、連鎖して大爆発を起こした。
「きゃあ!」
 爆風はフィーネを軽々と弾き飛ばす。
「フィー!」
 リンクは反射的に伏せていた体を起こしてしまい、荒れ狂う風圧にその身を晒してしまう。リンクの体は文字通り舞った。

 部屋中に硝煙のにおいが充満していた。煙は徐々に濃度を失い、右肩を押さえてむせ返るリンクの姿が浮かび上がる。ドドンゴの姿は見えず、爆弾のあった付近にハートの水筒が落ちていた。しかし今のリンクはそれどころではなかった。
「フィー、返事をしてくれー!」
 リンクは部屋の隅々まで探して回るが影も形もない。
(嘘だろ?)
 頭を巡らせては唇を噛みしめるリンク。するとリンクの頭に何かが落ちてきた。
「……よかった」
 安堵の表情を取り戻したリンクの手の中には目を回すフィーネの姿があった。



「ふーん、これがトライフォースのかけらなのね。はじめてみたわ」
 リンクの肩に乗っていたフィーネは手のひらへ下りると、興味深げにトライフォースのかけらを観察している。
「全部で8つあるらしいんだ。これが僕の旅の目的」
 リンクはトライフォースのかけらをしまう。フィーネは名残惜しそうにしていたが、すぐにリンクの周りを元気に飛び回り始めた。
「ねぇ、リンク。しばらくあたしがついていっちゃダメかな?」
 上目遣いでリンクにおねだりするフィーネ。
「しょうがないなぁ」
 内心はフィーネと一緒にいられることが楽しくて仕方なかった。だが、それを口に出すことは少し照れがある。嬉しそうなフィーネの様子にリンクの心も弾んだ。

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